こんにちは、ちざる です。
コロナも落ち着いてきて、運動会や文化祭の盛り上がりを感じる今日このごろです。
さて、今回は、著作権のお話です。
最近、FacebookやInstagram、TikTokで、他人のHPに掲載されていた写真や、HPの記事のコピーをそのまま掲載したり、新聞記事等をそのまま、又は、一部編集等をして自身のSNSにアップしていることを見かけます。
いま、あ!って心の中で思ったあなたは、注意が必要です。 今日はそんな話です。
結論としては、
『SNSで他人の著作物に係る作品等を投稿するときは、その著作者の許諾を得ておくことが安全ですよ』ということ。
それでは、以下、本ケースについて説明していきますが、本件に直接関係のない著作権法については、細かく説明しておりませんので、
著作権について、さらに細かく知りたい場合には、文化庁のホームページをご確認ください。
著作権とは
著作権とは、簡単に言えば、自分の考えや思想が表現された作品を保護するために、その創作者に与えられる権利と言えばよいでしょうか。
ここで、著作権法では、この作品のことを「著作物」と規定し、著作権法では、著作物を「思想または感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術または音楽の範囲に属するもの(著作権法第二条第一項1号)」と規定しています。
そして、この「著作物」を創作した人のことを「著作者」(著作権法第二条第一項2号)といいます。
通常、著作者が著作物を生み出すには、一定の努力が必要であることから、この努力・労力を保護する目的で定められたものが著作権法となります。
なお、著作権は、創作したその瞬間に生まれ、登録等は不要です。
この著作権法というルールがあることにより、「著作物」が他人によって勝手に模倣されたり、意図しない利用がされたりすることを防ぎ、文化の発展に寄与するということです。
著作権の種類
著作権は、大きく「著作財産権」「著作者人格権」の大きく二つに分けられます。
今回は、主に「著作財産権」について記載し、「著作者人格権」については、割愛します。
・著作財産権
著作権と言えば、通常この著作財産権のことを指します。
では、著作権の対象となるものにはどのようなものがあるのでしょうか。これは、著作権法第10条に例示されております。
- (1)小説、脚本、論文、講演その他の言語の著作物(著第10条第1項1号)
- (2)音楽の著作物(著第10条第1項2号)
- (3)舞踊または無言劇の著作物(著第10条第1項3号)
- (4)絵画、版画、彫刻そのほかの美術の著作物(著第10条第1項4号)
- (5)建築の著作物(著第10条第1項5号)
- (6)地図または学術的な図面、図表、模型そのほかの図形の著作物(著第10条第1項6号)
- (7)映画の著作物(著第10条第1項7号)
- (8)写真の著作物(著第10条第1項8号)
- (9)プログラムの著作物(著第10条第1項9号)
各号の詳細については、文化庁のみんなのための著作権教室で説明されていますのでこちらをご確認ください。
では、著作物性が認められないものとはなんでしょうか。
これは、すなわち、「思想または感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術または音楽の範囲に属するもの(著作権法第二条第一項1号)」に該当しないものとなります。
「思想または感情」を含まないものとしては、単なる事実である、例えば、東京タワーの高さであるとか、昨日の天気・気温のみの情報、歴史的な事実が該当する。
「創作」に当たらないものとしては、単なるデータの配列(その選択や配列に創作性があるものを除く)や、絵画を写しただけの写真(ただし、その写真の構成や表現に創作性が認められる場合を除く)等が該当するとされています。
二次的著作物(著第2条第1項11号)
また、上記(1)~(9)までの著作物をもとにして創作された著作物のこと。
元となった著作物を原著作物、原著作物から派生した著作物を二次的著作物とされ、原著作物とは別に著作権が成立します。
二次的著作物とは、原著作物を翻訳し、編曲し、もしくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案することにより創作した著作物のことと規定されています。
例えば、漫画原作のアニメ化とか映画化や、外国の小説を日本語に翻訳したもの等が二次的著作物に該当します。
このため、他人が二次的著作物を作る場合には、原著作者に対して許可をもらう必要があります。
編集著作物・データベースの著作物(著第12条、12条の二)
編集著作物・データベースの著作物とは、その情報のみにおいては、著作物性が無いデータ等であっても、その組み合わせ、まとめ方に工夫がある創作物のことです。
なお、新聞記事等は、事実の伝達に過ぎないと考えておられる方もいるかもしれませんが、死亡記事等を除き、記事となっているものは、その新聞社が著作権を保有していると考えることが通常となっております。ここ
・著作者人格権
著作者人格権は、著作者の思いや考え、すなわち人格を保護するものであり、著作財産権と異なり、譲渡が行えず、相続の対象ともならない権利です。
著作者人格権についての詳細は、こちらを参照ください。
著作権侵害とは
著作者の権利
著作権者(著作財産権)は、著作物の以下の利用を制限することができる旨が規定されてます。
著作物の利用形態には、複製権、 上演権・演奏権、 上映権、 公衆送信権、 公の伝達権、 口述権、 展示権、 頒布権、 譲渡権、 貸与権、 翻訳権・翻案権等、 二次的著作物の利用権があります。
そして、これらの権利を有する著作権者等には、その侵害行為に対して、差止請求(著第112条1項)を行うことができることが規定されています。
また、著作権を侵害した者に対しては、権利者が被った損害を賠償する義務があります(民709条)ので、著作権者は侵害者に対して、損害賠償を請求することができます。
なお、ここで、上記全ての権利を説明することはできないので、特にSNSでの利用において問題なる、複製権、翻訳権・翻案権と公衆送信権、及び、二次的著作物の利用権について説明します。
複製権、翻案権、二次的著作物の利用権
複製とは、「印刷、写真、複写、録音、録画その他の方法により有形的に再製すること(著第2条1項15号)」と著作権法上には定められています。 翻案とは、簡単に言えば、二次的著作物を創作することでよいと思います(江差追分事件)。
したがって、複製権・翻案権を有する著作権者は、著作物を他人が複製や翻案することを制限する権利を有しています。
簡単に言えば、著作権者は、海賊版等に対して、「No」と言える権利を有しているということです。
なお、著作権は、相対的排他権であるため、同じ著作物が創作されていた場合であっても、当該著作物が、その他の同一著作物に依拠して創作されたものでなければ、著作権侵害とはなりません。(ワン・レイニー・ナイト・イン・トーキョー事件)
公衆送信権
公衆送信とは、著作権法においては、放送、有線放送、インターネット通信(有線・無線含む)をまとめて示したものです。
具体的には、公衆送信には、テレビ放送、ラジオ放送、インターネットにおける各種送信等が含まれることになります。
よって、公衆送信権を有する著作権者は著作物をこれらの媒体によって送信する行為を制限することができます。
このことから、インターネット上のサーバーに許諾なく著作物をアップロードする行為は、複製権の侵害と同時に公衆送信権(送信可能化権)の侵害に該当します。
著作権の制限とは
著作権法では、著作権法の保護を受けない著作物(著第13条)や、著作権の保護期間が経過した著作物については、その財産権的な権利はありません。
また、著作権の保護期間内にある著作物であっても、その利用態様により、著作者の権利が制限されているケースがあります。
今回のケースに該当する可能性のある、著作権の制限規定としては、私的使用のための複製(著第30条)、付随対象著作物の利用(著第30条の2)、または、引用(32条)が考えられます。
私的使用ための複製
この規定は、簡単に言えば、個人的、または、家庭内等で使用する目的で、行われる著作物の複製については、権利行使の範囲外とするものです。
ここで、個人的、または家庭内という要件は特定かつ少数よりもさらに限定された閉鎖的な範囲を意味するとされています。
例えば、家族に聞かせる目的で、家の中で音楽を演奏する場合等が該当すると考えられます。
付随対象著作物の利用
付随対象著作物は、撮影会等で、撮影対象者以外の著作物が映り込んでしまった場合に、その映り込んでしまったものについては、複製権等の侵害とはしないための規定です。
典型的な例としては、ビデオ撮影していた場合に、著作物性のある音楽が入り込んでしまった場合や、写真撮影の背景に著作物が映り込んでしまった場合等が考えられます。
引用
著作物の利用態様が引用に該当する場合には、著作者の権利が制限されることが規定されています。 では、引用とはどのような態様のことを示すのでしょうか。
引用については、その要件について明示した判例として、パロディーモンタージュ事件があります。この判例で、引用の要件として、①明瞭区分性、②主従関係の2要件が示されています。
- 明瞭区分性とは、その名の通り、引用される文献等と自身の文章とが明確に分けられていることです。
- 主従関係とは、自身の文章の質及び量が引用する文章等を上回っており、主従関係ができていることを示しています。
また、近年は、実務的にはこれに必然性等を総合的に考慮して総合的に判断されているようですが、少なくとも上記2点を満たしていなければ、引用として認められません。
今回のケースにあてはめて考える
それでは、「FacebookやInstagram、TikTok等において、著作者の許諾なく、他人のHPに掲載されていた写真や、HPの記事のコピーをそのまま掲載したり、新聞記事等をそのまま、又は、一部編集等をして自身のSNSにアップする行為」について当てはめながら考えてみましょう。
他人のHPに掲載されている写真や、記事は、
(1)小説、脚本、論文、講演その他の言語の著作物(著第10条第1項1号)や、
(8)写真の著作物(著第10条第1項8号)等の著作権を有している可能性高いと考えられます。
繰り返しになりますが、新聞記事には、原則著作権があります。この詳細については、日本新聞協会のHPに記載されていますので、こちらをご確認ください。
このため、自身のSNSにおいて、これら他人の著作物を利用するためには、著作権者の許諾が必要であると考えられます。
一方で、SNSは、その機能的に個人的・家庭的な利用に含まれるのではないかと思われる方もいますが、原則として、Facebook等のSNSは、著作権法が規定する個人的・家庭的な範囲を超えているものと通常は判断されるため、私的使用のための複製としては認められる可能性は低いと思います。
また、記載方法にもよりますが、引用しているコンテンツが主となっている場合には、「引用」が認められる可能性も低いと考えられます。
このため、「FacebookやInstagram、TikTokで、許諾なく、他人のHPに掲載されていた写真や、HPの記事のコピーをそのまま掲載したり、新聞記事等をそのまま、又は、一部編集等をして自身のSNSにアップする行為」は、著作権侵害を構成する可能性が高いものと考えられます。
まとめ
ここまで、読んでいただきありがとうございます。途中、細かくて読みにくいところも多かったと思います。
今回、「FacebookやInstagram、TikTokにおいて、許諾なく、他人のHPに掲載されていた写真や、HPの記事のコピーをそのまま掲載したり、新聞記事等をそのまま、又は、一部編集等をして自身のSNSにアップする行為」は、著作権侵害に形式的には該当すると記載しました。
しかしながら、著作権侵害に該当したら常に著作権者から差止請求や損害賠償請求がくるとは限りません。
ここから先は、著作権者次第ということになります。
現代の市場においては、著作者としては、自身の著作物が拡散されることで、市場において有利に事業を進められる場合も多くあります。
このため、形式的には侵害に該当するような場合であっても、その記事の内容や模倣者の属性等により、著作者自身のブランドへの影響等を考慮して、何もしないという判断をすることや、反対に、模倣行為を推し進めるようなプロモーションを展開することもあるかもしれません。
ただ、形式的に侵害行為に該当する以上、突然、著作権者から警告等が通知される可能性もありますので、他人の著作物を利用する場合には、許諾を取ること、「引用」する場合には、引用の要件に注意すること、また、それ以前にその著作物を利用しなければならない必要性があるのか、をしっかりと検討することが重要と思うのです。
以上
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