【知財】そのネーミング、商標登録していますか?

 はーい、ちざるです。先日、ぶどう農家の手伝いで、巨峰狩りをしてきました。絶妙な高さのぶどう棚が腰が崩壊するかと思いました。知財系にいる方であれば、ブドウ⇒巨峰⇒巨峰事件なんて連想する方も多いのではないでしょうか。

 さて、今回は、商標についてです。

 本日の記事は、中小企業で商品の開発や販売を担当されている方や、フリーランスで事業をされている方を意識して書いております。

1.商標とは

 この記事を読んでいる方の中には、「商標」って言葉を初めて聞く方もいるのではないでしょうか。例えば、お店を開いた、起業した、又は、その準備をしているような場合、「商号」と「商標」を混同しているかもしれません。

 「商標」とは、簡単に言えば、物やサービスに付けられている文字や図形等の目印のことです。例えば、あなたがコンビニで買った炭酸飲料に付いている「コカ・コーラ」のロゴや、あなたが運動する時に履いているスニーカーについている「ナイキ」のマークのことで、その製品を購入するときに、あなたはそのロゴを目印に商品を購入しているはずです。

 そして、あなたは、商品を選択するとき、そのロゴの背景にあるその製品の品質や出所についての信頼をそのロゴによって識別しているはずです。

 例えば、炭酸飲料のコーラはたくさんの種類(コカ・コーラ、ペプシコーラ、メッツコーラ等々)がありますが、あなたがコーラを買うときには、「コカ・コーラ」のロゴが付いているコーラはこんな味、⇒よし、今回は、「コカ・コーラ」を買おうとなるわけです。 もし、コカ・コーラ社以外のところからも、「コカ・コーラ」と、同じ、又は、似たようなロゴのボトルが販売されていたら、どれが本当にあなたが買いたい「コカ・コーラ」なのか迷ってしまいますよね。

 このように、「商標」は、提供する物(サービス)がどこから来たのか(出所表示機能)、また、その物の品質の保証(品質保証機能)、及び、その物を広く知られるようにする(広告宣伝機能)を持たせることで、需要者(商品やサービスを使用する人々)に対して、自分が提供している物(サービス)と他社が提供している物(サービス)を区別できるようにする(自他商品等識別機能)を発揮させ、「商標」を使用する者(会社等)の業務上の信用を維持しております。

 そして、特許庁に対して、申請を行って、登録された商標を「登録商標」と呼びます。

2.商標と商号

 商標と商号とは、一文字違いの似たような言葉ではありますが、その扱いや法律上の位置づけは全く異なるものです。

 今回細かくは説明しませんが、大きく異なるポイントとしては、商号を取得していても商標を取得していることにはなりません。言い換えれば、商号を取得したのみでは、他人に対して、同一類似の商号を使用することをやめさせることはできません。

 また、商号の場合には、所在地が異なれば同一名称の商号登記を行うことができるため、日本には、同一業種に同一名称の会社が多数存在しております。一方で、商標は、特許庁に届出た商品の範囲「指定商品」において、登録された「商標」を独占して使用することができます。

 このほかにも、管轄や存続期間等々、異なる点が多数ありますが、覚えていただきたいことは、事業を開始する前に「商標」の登録について、しっかりと検討をすることです。

3.商標の種類

 商標は、基本的には、「文字」や「図形」を2次元で表記したものと、物の形状を3次元的に表した立体商標ですが、商標法の改正により、色彩のみからなる商標や、音商標など、これまでとは異なる商標についても保護することができるようになりました。

【新たに商標の登録ができる商標】

新しいタイプの商標の保護制度 | 経済産業省 特許庁

4.商標権を取得するメリット

 あなたが、使用したい「商標」が登録され、商標権を取得することができると、登録された商品(指定商品)の範囲において、その「商標」の使用を独占することが可能となります。

 言い換えれば、他人が、指定商品の範囲内において、同じ商標はもちろんのこと、類似する商標についても使用することができなくなります。

 この結果、例えば、道の駅、コンビニやスーパーに、あなたが取り扱っている商品が並べられたときに、誰でもあなたの商品であることを認識することができるようになります。

 さらに、長期間同じ商標を使用することにより、あなたの商品への信頼が高まり、あなたの商品へのブランド価値を高めることができます。

 最初は、無名のネーミングでも「商標」を取得して、長い間使用を続けることにより、その商品やサービスに対する信頼とともに「商標」の認知度は上がっていきます。今では、超有名な「Twitter」や「Amazon」「Facebook」も少し前までは誰も知らない企業だったと思います。

5.恐怖!!商標権と取らないでいると

 「商標権」なんて、もっと売り上げが出てから、お店が有名になってからで大丈夫、登録費用もかかるし、どうやら難しそうだし・・・

 なんて考えて、後回しにしていると、有名になったときに商標権侵害で訴えられる可能性があるので是非、スタートアップの段階から積極的に商標を取得していくことをお勧めします。

 しっかりと「商標」を取得しておけば、あなたの成功に便乗してくる模倣品に対して、積極的に対処することが可能になります。

 さて、なぜこれほどまでに商標登録をすすめているかといいますと、過去にニュースにもなっていますが、商標を先に他社に取られて、トラブルになったケースが数多くあるからです。

≪ケース1≫ 

 事件の詳細については、以下に判例リンクを添付しているので、詳細はそこに任せるが、簡単に言えば、モンシュールは、「ケーキ又は菓子を主とする飲食物の提供、及びこれらに関する情報の提供」を指定役務とする「MONCHOUCHOU/モンシュシュ」の商標権者ではあったが、原告側のゴンチャロフは神戸にある洋菓子メーカーであり、「菓子、パン」を指定商品とする登録商標「MONCHOUCHOU/モンシュシュ」を有していた。そして、モンシュールは、販売しているケーキの包装に「MONCHOUCHOU/モンシュシュ」を用いたため、原告の登録商標を侵害することになった事件です。

 判決によれば、損害賠償として、5140万円の支払いがモンシュールに命じられています。

【平成23(ネ)2238等    商標権  民事訴訟 平成25年3月7日  大阪高等裁判所】

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/059/083059_hanrei.pdf

【平成22(ワ)4461  商標権 侵害差止等請求事件 平成23年6月30日  大阪地方裁判所】

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/476/081476_hanrei.pdf

 この事件を参考にするならば、カフェなどで、ケーキの販売を行うことは通常行われていることだと思いますので、サービスに係る部分のみではなく、商品自体についても商標を取得しておく必要があります。さらに言えば、サービスの範囲について商標権の取得が可能であったとしても、他社が目的商標についての商標権を取得している場合には、当該名称を避けて別の名称とすべきということです。

≪ケース2≫

 ケース2では、商標権者が出願する前から使用をしていた商標だとしても、登録された場合には、その無効性を訴えて勝つことは、非常に難しい。たとえ、当該出願が、周知・著名でない商標を盗んだような出願であったとしても、そのことの立証はかなり困難であるし、また、正当に以前から使用している使用者に対しても、勝手に出願される前に、自ら出願する機会はありましたよね?と指摘されることもあり、出願しなかった方にも非があるとみられる可能性もあります。

【平成19(行ケ)10392  審決取消請求事件  商標権 平成20年6月26日  知的財産高等裁判所】

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/527/036527_hanrei.pdf

 また、商標法には、先に使用していた場合には、「先使用権」と呼ばれる権利が認められる可能性が条文に記載されていますが、当該規定の要件は大変厳しく、その商標が先使用権を主張する者の商標であるとして、対応する商品等において広く知られていることが求められます。

 この周知性は、必ずしも全国的に周知であることまでは求められないといわれていますが、周知性の程度の立証には、かなりの困難性がありますので注意が必要です。

【平成7(ワ)13225  商標権  民事訴訟 平成9年12月9日  大阪地方裁判所】

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/762/013762_hanrei.pdf

  このように、後から出てきた競合他社が、突然、商標権者となっても、登録主義を採用している以上、先に登録した者に対して文句が言えないことがあります。

 これを防ぐ、一番簡単な方法は、事業を開始したとき、商品を販売したときに合わせて該当する範囲の商標は登録しておくことです。

 確かに、出願、登録、権利の維持には、費用がかかりますが、訴訟で敗訴したときの損害賠償や、それにかかる労力に比べたら、比較にならないくらい安い費用で登録できますので、忘れずにご検討ください。

6.商標調査からはじめよう

 新製品や新規事業に使用する「商標」の候補がいくつかあがってきたら、それらの商標候補について、商標調査を行ってみましょう。

 商標調査は、自分で行う方法と、弁理士等に依頼して外部で調査を行う方法の大きく2つの方法があると思いますが、他社の候補商標についての登録状況を確認するのであれば、自分でできるようにしておくとよいと思います。

 自分で商標調査を行えば、基本無料で検索できますし、思いついたときにいつでも検索して、結果を確認することができます。

 商標調査を行うサイトは、いくつかありますが、特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)を利用すれば、無料で簡単に登録状況を確認することができます。

【特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)】

j-platpat

 商標調査の詳しい方法については、また別の機会に紹介したいと思います。

7.まとめ

 最後まで、読んでいただきありがとうございます。

 お店を始めるとき、いろいろな書類の提出が数多くあり、商標登録は後回しにされがちと思います。

 インターネットが発達しSNSで情報が急速に広がる現代、

 物が売れだした後に、知らない会社から警告書が届く、なんてことがあると、せっかく育てたブランドを変更しなくてはならなくなります。

 思いを込めたネーミングが使えない! そんなことにならないためにも、出来るだけ早い段階で商標調査を行い、メインのネーミングは、少なくとも使用する商品・サービスの範囲で登録しておくことをお勧めします。

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